2024年2月8日木曜日

2023年12月16日 「森林と昆虫」 北島博さん(森林総合研究所 森林昆虫研究領域) その2

 

 昆虫は植物と深く関わりのある生物で、植物の種数から寄生種数を推定すると数千万種が存在すると言われています。森林は高さがあるためマンション的な空間と言え、そこに棲む昆虫の種数も多くなります。これは森林を利用する人間から見ると多くの害虫がいるとも言えます。森林害虫とは葉や幹を食べる、吸汁する、葉や根に寄生して変形させるといった方法で生きている植物を害するものを指します。この他、イラガやチャドクガのように人に直接害を及ぼすもの、見ると精神的被害を受ける不快昆虫も含まれます。

 大きな森林病虫害には在来種マツノマダラカミキリを媒介者とした北米からの外来種マツノザイセンチュウによる松枯れ(森林法定害虫)、カシノナガキクイムシによるナラ菌感染のナラ枯れがあります。どちらも薬剤散布、被害木の焼却、殺虫剤の打ち込みによって抑えられますが、害虫の生活史をよく知って使わないと効果がありません。マツやコナラを利用するために防除するのか、見過ごして樹を無くし林の遷移に任せるのか、それは林を利用する地域住民の考えを基本にして決めることになります。

 

 森林の利用は樹そのものだけでなく、生態系サービスにも注目されています。例として、ソバ栽培地の周りに森林があると送粉昆虫が多く受粉率が高くなるという研究が挙げられていました。


 宍塚でも近年ナラ枯れ病が発生し、会員が駆除対策に当たっています。他地域では3~5年で収まりを見せており、宍塚も時間経過とともに落ち着いてくるものと思われるとのお話でした。関東の落葉カシ林は手を入れずにいると遷移によってシラカシなどの常緑広葉樹林になってしまいます。そしてこの極相林は自然にコナラ林に戻ることはありません。日本人の生活様式の大きな変化に伴い、宍塚も生活に添ったコナラやクヌギの利用が無くなった現在、どのような環境や樹種にしていくか、害虫防除を含めた維持管理方法を地域で考えていくことが必要となってきています。


今回の談話会を拝聴し、地域住民を林の生物作用のひとつに含めるか否かにより、林は大きく姿が変わるのではないかとの感想を持ちました。講演後の質疑応答では近年新規移入した外来カミキリの問題についてもご説明いただきました。ありがとうございました。                    

吉武直子






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