2024年3月16日土曜日

2024年1月20日「イモムシと植物」今野浩太郎さん( 農業・食品産業技術総合研究機構)

 

1月20日(土)、農研機構の今野浩太郎先生をお迎えして標記の土曜談話会を行いました。副題が ‘食うか食われないかの攻防関係から、緑の森の謎、多い虫少ない虫の謎まで’ という、内容が広範囲のものでしたので、端折ってですがご紹介します。


イモムシと植物


植物が動物に食べられないようにする戦略として、トゲなどで防御することがあるが、もっと巧妙な仕掛けで対処することが分かってきている。その例はイモムシが葉っぱを食べる(攻撃する)と、この攻撃の信号から葉の成分に毒物を供給する、あるいは消化を妨げる成分を産生して、巧みにイモムシの攻撃を防除する機構が明らかになってきているようだ。なので、植物は一方的に食べられてしまうということに甘んじているわけではないようだ。ところが、そうした植物の防御機構に対して、イモムシの方も対処戦略を備えることがあるようだ。紹介していただいた一例がイチジクを食樹としている暖かい地方にいるイシガケチョウ、この幼虫はイチジクの葉裏にある乳液供給脈をまずかじっておいてからおもむろに葉っぱを食べるというのだ。イチジクのあの白い乳液には恐らくあの防御エキスが含まれているのであろう。



緑の森の謎


今野先生は、こうした植物と虫の関係をもっと大きな生態系の機構に当てはめて、論を展開しておられるようだ。どうもこれは、植物、草食動物、肉食動物、という生態系ピラミッドの構造を基本として、この間の食う食われる関係の数値解析を基とした論の展開のようだ。この解析から、陸上の森では、動物だらけの水圏の生態系や陸上でもサバンナの生態系と違って、なぜ緑の森が残るのかとの解を見つけておられるようなのだ。森林生態系では虫の成長速度が速いのでそういう解となる、というように聞いたような気がするが、正確ではないかもしれない。



モンシロチョウの大発生


モンシロチョウは他のチョウ種と較べて、とくにキャベツ類を食するケースではかなり成長速度が速い。この成長速度を基に作成した数理モデル式はオーストラリアでのモンシロチョウの大発生と符合することとなり、今野先生の名声は世界に轟いた。(とは明確に言われておりませんが、恐らくそうであったのだと思います。)



世界の昆虫の話題


昆虫の数がこのところかなり減っているということが、世界的に大きな話題となりつつある。これがどうしてなのか、何が原因となっているのか。これを考えていくときに、生き物の量というものを数値的に捉えていくことがまず重要であり、数式でそのダイナミックスを検証していく作業が大きなヒントを与えてくれると思われる。

 


 今野先生は、ここにご紹介したようにイモムシと植物の食う食われる関係の中で生じている巧妙な相互作用をミクロな化学分析の手法で明らかにすると同時に、森林生態系の現象を数理モデルで記述することにより、今後の生態系の動向のマクロ予測にも取り組まれておられます。先生の研究の進展の一端を、私たちも少しは勉強していかねばと思いました。どうも有難うございました。                      


佐藤和明








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