2024年2月8日木曜日

2023年12月16日 「森林と昆虫」 北島博さん(森林総合研究所 森林昆虫研究領域) その1


北島博さん(森林総合研究所) を講師に、昆虫という生き物の形態や生活の工夫、マツ枯れ、ナラ枯れ、大発生する食葉性の害虫など森林に害を与える昆虫、人間活動と森林と昆虫との関係、および近年話題の外来種についてなど、幅広く紹介して頂きました。


今回もZoomで参加させて頂きましたが、遠くにいても気軽に参加できるので助かります。会場は16名程度と伺いましたが、Zoomでの参加者は最大で18名、入れ替わりがありましたので延べ2123名程度だと思います。専門の先生方の参加もみられました。北島先生のネームバリューもありましたが、森本理事長が、ワールドライフメーリングリストに行事を投稿したのも効果があったと思います。


北島先生の講演は、中身が濃く意義深いものでした。生物のみにならず、人間を取り巻く環境、さては哲学的な話題と興味深く聞き入りました。ナラ枯れは、対策のためにそれなりに学んだつもりでしたが、今まで知らなかったことも多く、にわか勉強だったことを思い知りました。


最初の話題「昆虫の形態や生活の工夫」では、スギノアカネトラカミキリの生活史やカブトムシ、モンシロチョウ、ゴマダラカミキリを例に季節をよんで生活していることを丁寧に説明してくれました。地球上の生物の数は、所説あるようですが約870万種とも推定され、そのうち昆虫が半数以上を占めるそうです。昆虫の種類が多い理由は、体が小さい、エサが多い、変態と休眠がある、様々な生活場所があるなど立体的構造が多種多数の虫を育ているからです。従って、人間にとっての害虫も多いということです。


マツ枯れやナラ枯れなどの森林(樹木)害虫は314種類記録されています。害虫は、生きている樹木を害する、葉を食べる、材(幹や枝)を食べる、樹液を吸う、葉や芽を変形させるなど樹に大きなダメージを与えます。結果として、マツ枯れ、ナラ枯れ、大発生する害虫により人間に害を与えるものと認識されてきました。中には虫を見るのも嫌だという人もいます。


マツ枯れ(マツ材線虫病)とナラ枯れ(ブナ科樹木萎凋病)のしくみと防除法について詳しく説明してくれました。どちらの防除も様々な手法講じ、春夏秋冬の時期を踏まえた適材適期が大事だとのことです。森林づくりをする上で、ブナ科が被害を受ける、太い木が被害を受けやすい、太い木はムシが育ちやすいなどの状況があります。


それに対しブナ科を切る、太い木を切るでは問題は解決しません。切った木は活用できるのか? 切った後はどんな森になるのか? ありのままの森林(潜在植生)に委ねるのか?などが課題になります。現存植生は、利用目的があり、結果としてつくられてきた人間活動による攪乱です。里山の代表的なクヌギ、コナラなどの雑木林も生活の必要からつくられた景観です。関東地方の潜在植生は温暖帯照葉樹林帯でサカキ、カシ、ツバキ、シイ、サザンカ、モチノキなどの樹種が繁茂しやすいです。


北島先生は、生態系サービスについても説明してくれました。私たちの生活を支える食料や水、気候の安定など、多様な生物が関わりあう生態系から得られることのできる恵みです。森林の生物多様性がソバの実りを豊かにすると教えてくれました。それは、花粉を媒介する昆虫の多様性が結実率を高めるからだそうです。とくに印象に残ったのは、シジュウカラ1羽が1年間に食べる虫の量をガに換算すると12万5千匹になるという古いドイツの研究があるとの説明です。生きるために人間とて例外でなく、壮大な自然の摂理を感じました。


森林が豊かな生物多様性を支えています。森林を守ることは生態系サービスを維持する意味があることを教えて頂きました。


収まらない森林被害と人間活動の問題や野生鳥獣と森林と人間の相互依存関係も説明してくれました。今話題になっているクマやサル、イノシシ、シカなど人里近くに現れることから、身につまされながら聞きました。


最後に、「近年の話題」茨城県で気を付けようと外来生物のクビアカツヤカミキリ、ツヤハダゴマダラカミキリ、サビイロクワカミキリ、モモヒメヨコバイ、クスベニヒラタカスミカメ、ケブカトラカミキリ、ハラアカコブカミキリの8種について生態、特性、侵入経緯などや茨城県内での報告例について説明してくれました。

 

今回の土曜談話会は多くの方に参加して頂き、大成功だったと思いました。今後、OA環境を整えて全国から大勢の方が参加してくれたら愉快だろうなと想像しました。


佐々木哲美


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